- 監督 北野武
- 主演 ビートたけし,大杉漣,寺島進
北野作品ではなく映画として最高傑作だと思う。北野監督も二度と撮れない奇跡的な作品ではないだろうか。
本作は裏切られたヤクザの復讐劇を見せるのが目的ではない。死に対峙した生の無邪気さを美しく静謐と描いた作品だ。
「死ぬの怖がってると死にたくなるんだよ」
主人公のヤクザ村川が、愛人に「平気で人撃っちゃうの凄いよね、平気で人殺しちゃうってことは、平気で死ねるってことだよね」と言われた事への返答だ。
自分が学生時代に書いた脚本は殆ど、この一言の台詞を咀嚼し続けた作業だった。自分がゲイカルチャーに触れ出した90年代後半〜2000年初頭はHIVに対する恐怖は時代的にピークだっだと思う。
死に対し恐れおののくのでもなく、自己犠牲的なヒロイズムもなく、荘厳としての万象を描くのでもない。
突発的な死が淡々とある事を捉えてる。
そして砂浜での遊戯がコントラストとしての生を描いている。
北野監督は映画を絵として捉えている。
言わば「ソナチネ」は生と死を象徴的に抽出した絵なのであろう。だからこそ、国境を越え世界の人々から賛美される映画なのであろう。
自分を裏切ったヤクザをM16で撃ち殺すシーン。漆黒に撃鉄の火花が散らす。北野監督は
「撃鉄を生」「闇夜を死」
とメタファーとして描く。
その描写は続く「Brother」「HANA-BI」でも引き継がれる。
マイケルマン作「HEAT」にも北野武を意識したカットが垣間見れる。
北野映画全般に言える事だが、旧知の友人であっても2人の関係性に「馴れ馴れしさ」がない事が奇異に映り、緊張感が伝わる。
「ソナチネ」の村川と片桐
「HANA-BI」の西刑事と堀部
「キッズリターン」のシンジとマサル
そして北野監督は女性との関係より、こうした男との繋がりを重視する。
同性愛のセクシャルな部分をカットしたストイックな繋がりが、非常に美しく北野映画を感じさせる。